不動産鑑定士の予備校はTAC・LEC・アガルートのどれがよいのか?現役鑑定士が費用・講義・添削で比較

はじめに
「不動産鑑定士の予備校は、どこを選べばいいのか」。受験を決めた人が最初にぶつかる壁が、この選択です。講座の費用は30万円台から50万円台後半。一度申し込めば、1年から2年はその教材と付き合うことになります。「高い方が安心なのか」「通信で足りるのか」「そもそも予備校に行かないと受からないのか」。迷って当然です。
不動産鑑定士の受験指導を常設している大手は、TAC・LEC東京リーガルマインド・アガルートアカデミーの3社に絞られます。選択肢が少ない分、比較の軸をはっきりさせれば、答えは出しやすい試験でもあります。
私たち鑑定士も、かつては同じ選択をした受験生でした。この記事では、現役の不動産鑑定士の立場から、3社の費用・講義・添削・実績を公表情報に基づいて整理し、「どんな人にどこが向くか」と「申し込む前に確かめておくべきこと」をお伝えします。特定の予備校をおすすめする記事ではありません。TACとLECは長年の受験指導の実績があり、アガルートは2023年10月に参入した比較的新しい講座です。
なお、費用や講座の内容は2026年9月時点で各社が公表している2027年・2028年合格目標コースの情報です。申込み前に必ず各校の最新情報をご確認ください。
第1章:予備校3社の基本データ
1-1. TAC:合格者の6割超が講座生
TACの最大の特徴は実績の厚さです。TACの公表によると、2011年から2025年の15年間累計で、論文式試験合格者1,829名のうちTAC講座生(TACの定義による)は1,258名、占有率68.7%です。合格者の多くがTACの教材を通ってきた、という事実は選ぶ側にとって大きな安心材料になります。
主力は「1.5年L本科生Plus」(2027年に短答式、2028年に論文式の合格を目指す2段階コース、全180〜183回)で、受講料は教室講座・ビデオブース講座が56万3,000円、Web通信講座が57万4,000円、DVD通信講座が59万円(いずれも税込・教材費込み)。早割の第1弾(2026年10月末まで)なら教室・ビデオブース50万3,000円、Web通信51万4,000円、第2弾(12月27日まで)でも教室52万3,000円、Web通信53万4,000円まで下がります。会員番号を持たない人は別途入会金1万円が必要です。このほか、短答式に絞った「短答本科生」(全49回、教室17万6,000円・Web通信19万8,000円)、1年で走り切る「10ヵ月本科生」「1年本科生」(全157回)、論文式に特化した「論文本科生」などがあります。
学習メディアは教室・ビデオブース・DVD通信・Web通信から選べ、通学できる校舎があるのはTACとLECだけです。
1-2. LEC:コースの幅と価格帯の広さ
LECは「短答+論文フルコース」(2027年向け・全168回)が40万円から、「短答+論文基礎コース」(全124回)が32万円から、短答式に絞った「短答合格コース」(全50回)が14万円から、論文式に絞った「論文合格コース」(全118回)が33万円からと、目的別にコースが細かく分かれています。割引は、LECの講座を受けて宅建士などの関連資格に合格した人が20%、関連資格の合格者や他校からの乗り換えが10%(いずれも2027年論文合格コース対象)です。
特徴は、初学者向けと学習経験者向けの講座が明確に分かれていることと、続けて使う人向けの制度が厚いことです。短答合格コースで短答式に受かった人は翌年の論文合格コースに「LEC奨学生割引」(一般価格の40%引き)で進め、最終合格時には合格お祝い金(2万円)もあります。「行政法規速習コース」のような科目単位の講座もあり、苦手科目だけを補強する使い方ができます。合格者の声を多数掲載しており、講師の顔が見える学校でもあります。
1-3. アガルート:オンライン完結と添削の選択制
アガルートは2023年10月に開講したオンライン完結型で、全科目を阿部美幸講師が担当します。「短答式・論文式試験対策カリキュラム」(2027年合格目標)が添削ありで37万1,800円、添削なしで32万7,800円(いずれも税込)。短答式試験対策カリキュラムのみなら10万7,800円、論文式のみは添削ありで26万1,800円、添削なしで21万7,800円です。
特徴は、添削の有無を自分で選べること(添削ありは全5回)、オンラインで質問できる制度(受講期間中50回まで)、他校からの乗り換え割引(20%)や受験経験者割引(10%)、そして両試験に合格した場合の受講料(税抜)全額返金と現金3万円の合格特典です(合格体験記の提出やインタビュー出演などが条件)。合格実績は令和7年度の受講生で短答式88.89%・論文式42.86%と公表されていますが、開講から日が浅く母数が小さい点は踏まえてください。専用の学習アプリ「AGAROOT Learning」で講義とテキストをスマホで見られる点も、通勤時間に勉強する社会人には使いやすいでしょう。
1-4. 3社の費用を並べる
| 予備校 | 短答式+論文式 | 短答式のみ | 学習スタイル |
|---|---|---|---|
| TAC | 56万3,000円(Web 57万4,000円)・早割50万3,000円〜+入会金1万円 | 17万6,000円〜(短答本科生) | 教室・ビデオブース・DVD・Web |
| LEC | 40万円〜(フル)/32万円〜(基礎) | 14万円〜 | 教室・Web |
| アガルート | 37万1,800円(添削あり)/32万7,800円(添削なし) | 10万7,800円 | オンライン完結 |
(2026年9月時点の各社公表価格・税込。割引・キャンペーンにより変動します)
第2章:どこで差がつくのか
2-1. 表示価格と、実際に払う金額は違う
表に並べた金額は「通常受講料」です。実際には、早割(TACは申込み時期で最大6万円の差)、他校乗換割や受験経験者割(アガルート・LEC)、LEC生割引、そして雇用保険の教育訓練給付制度(対象コースを修了すると受講料の20%・上限10万円が支給される制度。対象コースと受給要件はハローワークで確認が必要です)で、支払額は数万円から10万円以上変わります。
比較する際は「自分が使える割引を全部使ったときの金額」で並べ直してください。TACの56万円とアガルートの37万円は、割引後には差が縮まることもあれば、広がることもあります。
2-2. 通学かオンラインか
TACとLECには校舎があり、教室で受けられます。アガルートはオンライン専業です。この違いは講義の質の差ではなく、続けやすさの差です。
教室に通う最大の価値は、決まった時間に決まった場所へ行くという強制力と、同じ試験を受ける仲間がいることです。仕事の後に自宅で講義動画を再生するのは、想像以上に意志の力が要ります。逆に、地方在住で校舎まで往復2時間かかる人や、通勤中の細切れ時間しか確保できない人には、オンライン完結の方が現実的です。「自分は一人でも続けられるか」を先に見極めることが、学校選びより先に来ます。
2-3. 添削の有無は論文式で効く
短答式試験は択一なので、独学でも到達できる人が少なくありません。差がつくのは論文式です。鑑定理論の論文は、基準の文言を正確に、かつ問いに合わせて再構成する訓練が要り、自分の答案の何が足りないかは自分では見えません。添削は、その「見えない部分」を外から指摘してもらう仕組みです。
TACとLECは答案練習と添削がコースに組み込まれています。アガルートは添削あり・なしを選べるので、「まず添削なしで始めて、論文式の年に添削ありへ切り替える」という設計もできます。論文式まで一気に狙うなら、添削の回数と返却の速さは費用と同じくらい重要な比較軸です。
2-4. 実績の数字の読み方
TACの「占有率68.7%」は、合格者のうちTAC講座生が占める割合であり、「TACに入れば68.7%受かる」という合格率ではありません。また「講座生」の定義(対象コースの受講者)は各校が決めています。LECやアガルートが載せている合格者の声も、本人の申告に基づくものです。
それでも、TACの母数の大きさは事実であり、合格者の多くが通った教材であることは判断材料になります。数字を見るときは「定義は何か」「母数はいくつか」を一度確かめる。これは鑑定評価で統計を扱うときと同じ姿勢です。
第3章:現役鑑定士の結論――選び方と、申し込む前の順番
3-1. タイプ別に向く学校
- 時間と費用を確保でき、教室のペースで走りたい人:TACの本科生。実績と教室網、答練の量で、迷わず走れる環境が整っています。
- 費用を抑えつつ、初学者向けのコースで体系的に学びたい人:LECの短答+論文基礎コースやフルコース。定価どうしでもTACより15万円ほど低く、割引を使えばさらに差が開きます。
- 通勤時間中心で、オンライン完結で進めたい人:アガルート。添削の有無を選べるので、初年度の負担を下げられます。
- まず短答式だけを確実に取りたい人:3社とも短答式に絞ったコースがあり、10万円台から始められます。短答式合格は2年間有効なので、この設計は現実的です。
どの学校を選んでも、講義を聴くだけでは受かりません。合否を分けるのは、講義と講義のあいだに何回問題を解いたかです。
3-2. 申し込む前に確かめておくべき3つのこと
30万円から57万円を払う前に、確かめておくべきことが3つあります。
- 鑑定理論の手触りが自分に合うか。鑑定理論は不動産鑑定評価基準という条文に近い文章を、理解し、覚え、書く科目です。この作業が苦にならないかどうかで、続けられるかが決まります。
- 平日に何分確保できるか。合格者の多くは平日1〜2時間、休日はそれ以上を1年以上続けています。「土日にまとめて」は続きません。
- 短答式の過去問を数年分見たか。試験の形式と難度を自分の目で確かめてから講座を選ぶと、必要なコース(短答のみか、論文までか)を間違えません。
この3つは、予備校の無料体験講義(TACのWeb体験講義、LECのおためしWeb受講、アガルートの無料体験)でもある程度確かめられます。ただ、体験講義は「教え方が合うか」は分かっても、「自分が毎日続けられるか」は数週間使ってみないと分かりません。
当社が運営する学習アプリ「鑑トレ」は、この「申し込む前の数週間」のために作りました。短答式の過去問12年分960問、一問一答2,076問、テキスト117章と要点解説の動画643本を、登録はメールアドレスだけ、無料枠から使えます。全機能でも月額2,750円(税込)です。2026年9月には、過去問を1肢ずつ○×で解く肢別モード(4,238肢)、論文式の論点を書いてAIの採点を受ける論証カード(395論点・有料会員は1日3回)、解説の「都市計画法第29条」から条文へ直接飛べる条文ビューア(56法令12,434条)を加えました。1か月使えば、上の3つはすべて自分で確かめられます。当社のサービスですので、その点は割り引いてお読みください。
3-3. 予備校に入った後こそ、講義の「あいだ」を埋める
予備校に申し込んだ後の勉強は、週末の講義と、平日の復習に分かれます。講義で分かったことは1週間で抜けます。抜ける前に、電車の中で一問一答を20問、夜に過去問を5問。この繰り返しが、次の講義までに前回の内容を定着させます。
予備校の教材は体系を学ぶために作られていて、スキマ時間に回すには重い。鑑トレのようなアプリは、その隙間を埋める道具として、予備校と一緒に使うものです。論文式の答案も、予備校の添削に出す前の下書きとして、論証カードのAI採点で要素の抜けを潰しておけます。予備校か、アプリか、ではありません。順番と役割の話です。
まとめ
不動産鑑定士の予備校は、実績で選ぶならTAC、価格とコースの幅ならLEC、オンライン完結と添削の選択制ならアガルートと、それぞれに明確な強みがあります。
要点を振り返ります。
- 大手3社の短答式+論文式コースは、割引前で32万円から57万円の幅があり、早割・乗換割・教育訓練給付で支払額は大きく変わります。
- 通学かオンラインかは講義の質ではなく「自分が続けられる形」で選ぶべきです。
- 論文式まで狙うなら、添削の回数と返却の速さは費用と同じ重さの比較軸です。
- 実績の数字は定義と母数を確かめてから読むべきで、それでもTACの母数の大きさは事実です。
- 申し込む前に、鑑定理論の手触り・平日に確保できる時間・過去問の難度を自分で確かめておくと、コース選びを間違えません。
これから不動産鑑定士を目指す社会人・学生の方、予備校を選び直そうとしている受験経験者の方。まず自分の続けやすさを確かめてから、学校を選んでください。
予備校を決める前に、まず鑑トレで1か月試してみてください。 短答式の過去問12年分・一問一答・テキストと要点解説を、登録はメールアドレスだけで、無料枠からお使いいただけます。続けられそうだと分かってから、予備校を選んでも遅くありません。

