株式会社KRE Appraisal

トランクルーム投資、利回り20%は本当か?不動産鑑定士が解説する稼働率・立地・出口戦略

公開日:更新日:執筆:不動産鑑定士 吉田健人
屋内型セルフストレージ施設の清潔な廊下。両側に青色のシャッター式ストレージユニットが整然と並ぶ建築写真風の構図で、トランクルーム事業の不動産評価を象徴する画像。

はじめに

「トランクルームは手堅い投資だと聞いたが、本当に収益を生むのか」「所有地にコンテナを置くだけで儲かるという話を聞いたが、実態はどうなのか」。近年、トランクルーム・セルフストレージへの投資や事業参入を検討される方からのご相談が増えています。

日本のトランクルーム市場は約900億円規模(矢野経済研究所「2025年版 拡大する収納ビジネス市場の徹底調査」、2025年度予測)に達し、年率4~6%の成長を続けています。住宅の狭小化、EC市場の拡大に伴う在庫保管ニーズ、そして高齢化に伴う荷物整理需要など、構造的な追い風が吹いている市場です。しかし、その一方で「思ったように稼働率が上がらない」「売却しようとしたら想定以下の評価だった」という声も少なくありません。

その原因は、トランクルーム・セルフストレージの不動産評価には、一般的な収益不動産とは異なる特殊な論点が存在するからです。安定稼働までに1~2年を要する立ち上げ期間の問題、住宅地への近接性が価値を高めるという通常の商業施設とは逆の立地特性、そして建物や設備を撤去して更地に戻せるかどうかという転用可能性の問題。これらを正確に評価に反映しなければ、投資判断を誤るリスクがあります。

この記事では、私たち鑑定士の視点から、トランクルーム市場の構造を整理し、評価上の特殊論点と鑑定手法の適用方法を解説します。トランクルームへの投資を検討している方、既にトランクルーム事業を運営している方、遊休地の活用先として検討中の地権者の方にとって、意思決定の材料になれば幸いです。

第1章:トランクルーム市場の現状

1-1. 市場規模と成長ドライバー ― 約900億円市場が年率4~6%で拡大中

日本のトランクルーム・セルフストレージ市場は、矢野経済研究所「2025年版 拡大する収納ビジネス市場の徹底調査」によれば、2025年度の市場規模は917.8億円(予測、前年度比4.4%増)、前年度の2024年度実績見込みは878.7億円(前年度比6.2%増)と推定されています。2015年時点では約500億円程度でしたので、約10年で市場規模は約1.8倍に成長しました。年率換算で4~6%の成長率です。

この成長を支える要因は、大きく3つあります。

住宅の狭小化と収納不足

国土交通省の住宅着工統計によれば、新築マンションの平均専有面積は過去20年間で縮小傾向にあり、2024年の首都圏平均は約66m2です。住戸面積が小さくなるほど収納スペースは不足し、自宅外に荷物を預けるニーズが高まります。東京23区のワンルーム・1LDKでは特にこの傾向が顕著です。

EC市場の拡大と個人事業者の在庫保管ニーズ

経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表)によれば、日本のBtoC-EC市場規模は2024年に約26兆円に達しました。メルカリやAmazonマーケットプレイスで副業・個人事業を営む人が増加し、商品の在庫保管場所としてトランクルームを利用するケースが増えています。

高齢化に伴う荷物整理・相続前の断捨離需要

高齢者世帯の増加に伴い、自宅のダウンサイジング(住み替え)や施設入居の際に、家財道具を一時的に預ける需要が拡大しています。遺品整理や相続前の整理を目的とした利用も目立ちます。

米国のセルフストレージ市場は約7兆円規模で、人口一人あたりの面積は日本の約20倍です。日本市場はまだ成長余地が大きいとされる根拠がここにあります。

1-2. 屋内型(ビル型)vs 屋外型(コンテナ型)の分類と特徴

トランクルームは、大きく2つのタイプに分類されます。不動産評価の観点では、それぞれ全く異なる評価アプローチが必要になるため、この分類の理解は不可欠です。

屋内型(ビル型)

既存のビルやマンションのフロアをパーティションで区切り、個別のスペースとして貸し出す形態です。空調・セキュリティが充実しており、利用者が24時間出入りできる施設が多いのが特徴です。初期投資は大きくなりますが、顧客単価が高く、解約率も低い傾向にあります。都心部や駅前のビルで多く見られ、築古ビルのコンバージョン(用途転換)事例も増えています。

屋外型(コンテナ型)

更地や駐車場にコンテナユニットを設置する形態です。初期投資が比較的小さく、建築確認が不要なケースもあるため、参入障壁は低めです(ただし、自治体によっては建築基準法上の「建築物」として扱われる場合があり、確認が必要です)。顧客単価は屋内型より低いものの、地代が安いエリアで展開すれば高い利回りを実現できます。ロードサイドや住宅地近接の遊休地で多く見られます。

不動産評価においては、屋内型はビルそのものの評価と事業収益の評価が一体となるのに対し、屋外型はコンテナ設備(動産に近い性格)と土地の評価を分離して考える必要がある点が重要な違いです。

1-3. 主要プレイヤーと事業モデル

トランクルームの事業モデルは、大きく3つに分類されます。事業モデルの違いは、評価時に想定する収益構造に直接影響します。

一括借上げモデル

土地所有者(地権者)がトランクルーム運営会社に土地または建物を一括で賃貸し、固定賃料を受け取るモデルです。地権者側のリスクは低く、稼働率に関わらず一定の賃料が入ります。不動産評価の観点では、通常の賃貸借契約に基づく収益物件として評価でき、比較的シンプルです。

自主運営モデル

土地所有者や事業者が自らトランクルームを建設・運営し、利用者から直接賃料を受け取るモデルです。稼働率が高ければ一括借上げより高い収益が得られますが、立ち上げ期間中の空室リスクやマーケティングコストを負担する必要があります。評価にあたっては、稼働率の推移を精密に予測する必要があるため、鑑定の難度は上がります。

フランチャイズモデル

大手ブランド(ハローストレージ等)のフランチャイジーとして運営するモデルです。ブランド力と集客ノウハウを活用できる反面、ロイヤリティ(事業者により異なるが、売上の一定割合)が発生します。評価時には、ロイヤリティ控除後のネット収益を基礎とする必要があります(なお、キュラーズ等は自社直営モデルが中心です)。

第2章:トランクルームの不動産評価はなぜ特殊か

2-1. 稼働率が評価を左右する ― 立ち上げ期間と安定期の収益差

トランクルーム評価で最も重要な変数は「稼働率」です。一般的な賃貸マンションやオフィスビルであれば、竣工後数か月で安定稼働に達するケースがほとんどですが、トランクルームは事情が異なります。

業界の経験則として、新規開業したトランクルームが安定稼働(稼働率80%以上)に達するまでには、通常1~2年、立地条件によっては3年以上を要するとされています。開業直後の稼働率は低い水準にとどまり、認知度の向上とともに月ごとに段階的に上昇していくのが典型的なパターンです。

この「立ち上げ期間」の存在が、評価額に大きな影響を与えます。たとえば、100室のトランクルーム(平均月額賃料1万円/室)を想定した場合の収益差を見てみましょう。

シミュレーション:稼働率の違いによる年間収益の比較

項目立ち上げ1年目安定期(3年目以降)
稼働率40%85%
月額賃料収入40万円85万円
年間賃料収入480万円1,020万円
運営費用(賃料収入の30%と仮定)144万円306万円
年間純収益(NOI=Net Operating Income)336万円714万円

安定期のNOI(714万円)は、立ち上げ1年目(336万円)の約2.1倍です。つまり、同じ物件でも「今の稼働率」で評価するか「安定期の稼働率」で評価するかによって、収益還元法に基づく評価額は2倍近く変わる可能性があります。

私たち鑑定士が評価を行う際には、現在の稼働率だけでなく、周辺の競合施設の稼働状況、エリアの人口密度・世帯数、過去の立ち上がり実績データなどを総合的に分析し、「合理的に到達可能な安定稼働率」を見極めることが求められます。

2-2. 立地条件の評価 ― 住宅地に近い方が有利という逆転現象

商業施設やオフィスビルであれば、駅前や幹線道路沿いの商業地に立地するほど評価が高くなるのが一般的です。しかし、トランクルームの立地評価にはこの常識が当てはまりません。

トランクルームの主要顧客は近隣の居住者です。業界では、利用者の主要商圏は施設から半径1~2km圏とされ、近隣居住者の利用が中心です。つまり、商業地の一等地よりも、住宅密集地の中や近接地の方が集客力は高いのです。

一方で、住宅地に近いということは、地代(土地の取得コスト・賃借料)が商業地よりも安いことを意味します。これは投資利回りの観点から見ると二重の利点です。需要が強い場所で、かつ取得コストが抑えられるためです。

ただし、住宅地立地には注意点もあります。自治体の景観条例や用途地域の制限により、コンテナの設置が制限される場合があります。第一種低層住居専用地域ではトランクルーム事業が認められないケースもあるため、用途地域の確認は不可欠です。

私たち鑑定士が立地を評価する際には、以下の要素を総合的に判断します。

  • 商圏内人口・世帯数:半径2km圏内の人口密度と世帯数
  • 競合施設の密度:近隣の既存トランクルーム数と稼働状況
  • 視認性とアクセス性:幹線道路沿い、あるいは住宅地からの動線の良さ
  • 用途地域・法規制:コンテナ設置や事業運営に対する法的制約の有無

2-3. 転用可能性 ― 更地復帰のしやすさが資産価値の下支えに

トランクルーム投資の隠れた利点の一つに「転用可能性の高さ」があります。特にコンテナ型の場合、設備を撤去して更地に戻すことが比較的容易です。この「出口の柔軟性」は、不動産評価上、見過ごせないプラス要因です。

たとえば、100坪の更地にコンテナ型トランクルームを設置した場合、規模・地域により幅はあるものの、コンテナ撤去・整地費は数百万円程度で収まるケースが多く見られます。これに対し、同じ土地にアパートを建設した場合、解体費用は規模・構造により1,000万円以上に達するケースもあり、更地復帰コストの差は大きく開きます。

この転用可能性の高さは、不動産評価において「リスクプレミアム」の低減要因として働きます。トランクルーム事業が不振であっても、比較的低コストで更地に戻して売却・別用途への転用ができるため、投資リスクが限定されます。

鑑定評価では、この転用可能性を主に2つの方法で反映します。

  1. DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法、将来の純収益を割引現在価値に換算して収益価格を求める手法)の出口(復帰価格):保有期間終了時に更地として売却する前提を置き、その際の更地価格から撤去費用を控除して復帰価格を設定する
  2. 還元利回りの調整:転用が容易な物件は、転用が困難な物件(用途が限定される特殊な建物等)に比べて、やや低い還元利回り(=高い評価額)を適用する

第3章:鑑定評価の3つのアプローチとトランクルームへの適用

3-1. 収益還元法(DCF法)の適用 ― 稼働率カーブの設定が鍵

トランクルームの鑑定評価において最も重視されるのは、収益還元法、特にDCF法(前述)です。

DCF法は、将来の各期に発生するキャッシュフロー(純収益)を割引率で現在価値に換算し、その総和に復帰価格の現在価値を加えて収益価格を求める手法です。トランクルームへのDCF法適用で最も重要なのは、「稼働率カーブ」の設定です。

前述のとおり、トランクルームには1~2年の立ち上げ期間があるため、分析期間の初年度から安定稼働を前提にすることはできません。一般的には以下のような稼働率カーブを想定します。

  • 1年目:30~50%(開業初年度、認知度が低い段階)
  • 2年目:60~75%(口コミやリピーター利用が増加する段階)
  • 3年目以降:80~90%(安定稼働期)

この稼働率カーブの設定次第で、評価額は大きく変動します。たとえば、安定稼働率を85%と設定するか90%と設定するかで、還元利回り7%を前提とした場合の評価額は約7%変わります。わずか5ポイントの稼働率の差が、数百万円から数千万円の評価差につながるのです。

私たち鑑定士がDCF法を適用する際に特に留意する点は以下のとおりです。

  • 運営費用の構成:管理費、清掃費、セキュリティ費用、広告宣伝費(特に立ち上げ期は広告費が嵩む)、固定資産税・都市計画税
  • 解約率と入替コスト:トランクルームの平均利用期間は約2~3年とされ、解約時の原状回復費用や再募集コストを織り込む必要がある
  • 割引率の水準:トランクルームは一般的な賃貸住宅やオフィスに比べて事業リスクが高いため、評価実務上の目安として割引率は6~9%程度が適用されることが多い(立地・事業モデルによる)

3-2. 原価法の適用 ― コンテナ型の再調達原価と減価

原価法は、対象不動産を仮に新たに取得・建設した場合のコスト(再調達原価)を算出し、そこから減価修正を行って価格を求める手法です。トランクルーム、特にコンテナ型への原価法の適用には独自の論点があります。

コンテナ型の再調達原価

コンテナ型トランクルームの再調達原価は、主に以下の構成要素から成ります。

  • コンテナユニットの取得費:中古海上20フィートコンテナを転用する場合は1基20~50万円、トランクルーム用にカスタマイズされた新品コンテナは1基80~150万円が目安(仕様・断熱・換気設備により変動)
  • 設置工事費:搬入・据付・基礎工事で1基あたり20~40万円程度(クレーン車手配を含む)
  • 付帯設備費:照明、換気設備、セキュリティシステム、看板・フェンス等
  • 造成・舗装費:敷地の整地、アスファルト舗装、排水設備等

コンテナ20基を設置する典型的な屋外型施設であれば、土地を除いた設備の再調達原価は2,500~4,000万円程度になります。

減価修正の考え方

コンテナは建物に比べて耐用年数が短く、一般的に法定耐用年数は7年(金属造のコンテナ式貯蔵庫として)です。ただし、実際の使用可能年数は適切なメンテナンスを行えば15~20年に及ぶケースも多く、鑑定評価では経済的耐用年数を個別に判定する必要があります。

また、コンテナが法的に「建築物」に該当するか「動産」に該当するかは、基礎への固定方法や建築確認の有無によって異なります。この法的性質の違いは、固定資産税の課税区分にも影響するため、評価時に確認すべき重要なポイントです。

3-3. 取引事例比較法の課題 ― 事例の少なさをどう補うか

取引事例比較法は、類似の不動産の取引事例を収集し、事情補正・時点修正・地域要因比較・個別的要因比較を行って価格を求める手法です。一般的な住宅や事務所ビルでは多くの取引事例が得られますが、トランクルームについては事例の収集が困難であるという構造的な課題があります。

事例が少ない理由はいくつかあります。

  • トランクルーム単独の売買取引は件数が少なく、不動産取引情報の公開データベースにも蓄積が乏しい
  • 一括借上げ物件の場合、土地の売買として記録され、トランクルーム事業としての収益情報が付随しない
  • 大手運営会社が直営で展開するケースが多く、第三者間の売買が発生しにくい

このため、私たち鑑定士は以下のような方法で取引事例比較法の制約を補完しています。

  1. 収益物件の利回り事例の活用:トランクルームそのものの取引事例が少なくても、類似の収益構造を持つ物件(駐車場、コインランドリー等のオペレーショナルアセット)の利回り水準を参考にする
  2. 更地としての取引事例の活用:土地部分については更地の取引事例を用い、建物・設備部分は原価法で別途評価する方法を採る
  3. 賃料事例の収集:売買事例が乏しくても、トランクルームの賃料事例は比較的収集しやすいため、賃料水準の妥当性検証に活用する

結果として、トランクルームの鑑定評価では、収益還元法を主たる手法とし、原価法で検証し、取引事例比較法は補助的に用いるという三手法の適用バランスが、一般的な収益不動産とは異なるものになります。

収益物件の価格を利回りの中身から確かめる方法は、収益物件の不動産鑑定のページでまとめています。

まとめ

要点を振り返ります。

  • 日本のトランクルーム市場は約900億円規模で年率4~6%成長中であり、住宅の狭小化・EC拡大・高齢化が構造的な追い風となっている
  • 安定稼働(80%以上)に達するまで1~2年かかるため、「今の稼働率」と「安定期の稼働率」で評価額に2倍近い差が生じうる
  • 立地特性は一般的な商業施設と異なり、住宅密集地への近接性が集客力に直結する
  • 特にコンテナ型は撤去・更地復帰が容易であり、転用可能性が投資リスクの限定要因として評価に反映される
  • DCF法を主軸とし稼働率カーブの精密な設定が鑑定の質を左右するため、評価手法の適用バランスが一般的な収益不動産と異なる

トランクルーム・セルフストレージは、成長市場であると同時に、評価の専門性が問われる不動産です。投資判断、事業計画の策定、あるいは既存施設の売却・担保評価において、客観的な価値の把握は不可欠です。

トランクルーム・セルフストレージの不動産評価は、稼働率の推移、立地特性、転用可能性といった複数の変数が絡み合う専門性の高い分野です。投資判断や事業計画の策定にあたって、客観的な資産価値の把握が必要な場合は、ぜひ一度ご相談ください。当事務所では、投資家様・事業者様・地権者様のご相談を承っております。初回のご相談は無料です。

関連する記事

電話で相談無料相談フォーム